むげんの京都 前編
2019年5月に行った京都旅行の備忘録です。今更だけど写真を整理していたら記録を残しておきたくなったので。
はじめての一人旅
オタクなので現場に一人で遠征する事はあったし誰かと旅行する事もあったけど、目的もなくなんとなく決めた一人旅はこれが初めてででした。衝撃的な楽しさ。知らない街をひとりで歩く事はどうしてこんなに楽しいのか。私、ひとり旅が好きなのか、と気づいた旅でした。
行き先は「そうだ、京都に行こう」と決めた。偉大なキャッチコピーだよ。
昼過ぎに京都駅に到着。お宿に向かって歩いていると「EGG SAND」と書かれた黒板が。たまごサンド。京都にいるうちに一回は食べたいと思っていた。吸い込まれるように入店。「ソングバードコーヒー」のたまごサンドは、ふわとろの卵にマヨネーズとバターの塩気が効いていてとても美味しかった。ヨーグルトの酸味が口直しになって永遠に食べられる。一食目から美味しくて幸先がよいな〜と幸せを噛み締めた。
本日のお宿、西陣「京旅籠 むげん」に到着。
呉服屋だった京町屋を改修したという全5室のお宿。休前日でも一人泊できる和室があります。オーナーご夫妻は二人とも旅好きで出会いも旅先だったとのこと。素敵だ〜。「一人旅も好きだから、宿を始める時に一人用の部屋は絶対に作ろうと思ったの」有り難すぎる。
坪庭を眺めながらお付き菓子を頂く。この上生菓子があんまりに美味しくてどちらのものか尋ねてしまった。京都の老舗「塩芳軒」さんだそうです。塩芳軒本店はここから徒歩圏内。むげんさんでは食べ物はもちろん食器やインテリアなどを京都の、特にご近所のもので揃えられているそう。寝食を通して文化を肌で感じてほしいとの事。すでに満足度100%超え。
202号室。座布団が可愛い。窓際の机の下には掘り炬燵のように足を入れられます。窓に向かって机がある部屋が大好きなんよーー。
部屋のお風呂は浴槽なし、シャワーのみ。初夏だったのでシャワーで充分でした。
一階は食堂。朝食がとても美味しかった!
土間の台所(現役)玄関帳場(現役)
蔵の中はバーカウンターでこれがまたかっこいい!
市内散策に出かけようとしたところ宿のスタッフさん一推しの店を教えていただいた上に、自転車も貸していただいた。わーい。早速行ってみます。
西陣の「うめぞの茶房」さん。寒天とわらび粉で固めたかざり餡。写真撮ってないんだけどショーケースにずらりと並ぶ姿が可愛いかった。選んだのは紅茶のかざり餡に、トッピングは白餡・シャインマスカット・薔薇の花びら。上品な美味しさでした。
加茂川を南へと自転車を漕ぐ。なんだか学生時代を思い出したりした。観光と地元感のバランスが絶妙だなあ。寺町通りまで南下してパンを買って帰りました。
京都二日目の朝
快晴。今日は洛東から洛北に向かいます。途中で晴明神社にも寄ったよ〜。羽生くんのファンがたくさんお参りされているようでした。
「進々堂 京大北門前店」で朝カレー。ある小説のなかでこのカレーを食べるシーンがあり憧れていたのです。ナラ材の長テーブルってこれか〜〜!タマネギと肉だけのシンプルなカレー。こんな味だったのか…。ちなみにこの旅で訪れた場所のほとんどは何某かの聖地です。私は漫画の中で地名を覚え、小説の中で舌鼓を打って育ってきたので、外出すると「本のなかに入ったみたいだ!」と感激する。二次元先行の人生。
ちょうど数日前に遠藤ミチロウさんが他界されていたのですが、レジに貼られていたガムテープにマジックで「遠藤ミチロウ、死す!!」と書かれていた。喫茶店は言論空間…京大前っぽい追悼だなと思った。
哲学の小径も少し歩く。
これが噂の銀閣寺…絶対に語弊があるけど今っぽくてオシャレだった。
吉田山の山頂「茂庵」さん。市中の山居と言われるほど森の気配に囲まれたカフェ。大変な人気店で以前友人と来た時は待ち時間が長くて断念したのだ。今日は待つぞ!という気合いで来ました。一時間ほど待って入店。
二階のカウンターからは京都市街が見渡せます。窓から入ってくる風が嘘みたいに気持ちよかった。窓ガラス越しに見る少し歪んだ風景も素敵だったので今度は冬に来たいな…なんて思っていたら2022年8月14日に閉店されてしまった。悲しい。次世代に引き継ぐ計画はあるそうなので復活をお待ちします。
茂庵はもともとは大正時代の実業家谷川茂次郎の茶室でし、茂次郎の雅号が「茂庵」だったとのこと。その頃、吉田山の山頂一帯は大きな茶苑だったそうです。山の東側はには茂次郎が建てた集合住宅が現存しており、当時の空気が残っているようでした。京大教官ら比較的リベラル層の宿舎だったらしい。
少し離れただけで山に突入してびっくりした。京都って都会の近くに田舎があって面白いですね!?(ドドド新規の感想)
新緑の瑠璃光院
有名な撮影スポットは二階ですが、一階のがのんびりくつろげて良かった。
寺院っぽくない造りだと思っていたら、元は実業家の別荘だったらしい。その後料理旅館を経て現在のお寺になったとのこと。そんな転生もあるのか。
一度宿まで戻り自転車で市内散策に出ます。自転車の機動性最高だ。数年ぶり乗ったけど自転車に浮かれ旅でしたよ。
KYOTOGRAPHIE 京都国際写真祭2019の開催中で、市内各所で写真が展示されていました。誉田屋源兵衛竹院の間で展示されるピエール・セルネが気になっていたの。時間ギリギリに駆け込む。
日本の春画とセルネのSynonymsシリーズが代わる代わる展示されています。デフォルメしつつ細部まで描く春画と、抽象化されたシルエット写真の対比が面白い。同じ行為なのに違う切り口。表現の豊かさが楽しめる形でした。会場となった誉田屋源兵衛(こんだやげんべえ)は280年続く老舗の帯匠。展示されていた昇鯉の帯は迫力だった。
京グラはこの一ヶ所しか見れなかったけど本当に楽しかったなあ。
タマゴサンド再び
お昼を食べそこねたので早めに夕飯いただきます。「空蝉亭」のトンカツ、すっっごく美味しかった!ここもムゲンさんでおすすめされたお店。ムゲンのおすすめ最強説。火入れが完璧。
締めのたまごサンド。カリっと揚げられてます。油が重くなくてペロっと食べた。
ムゲンに戻って、バーで飲む事にしました。
夜、こっちに住んでる友達が顔を見せに来てくれた。彼女は大学で一番の仲良しで、四年間ずっと毎日一緒にいた。笑顔で「私が結婚する時、お前なんて言ったか覚えとる?」と聞かれる。覚えてない…相手がバツイチ子持ちでひと騒動あったのは覚えてる…「みんな割と反対してたけどアンタは『Kは苦労をツマミに呑めるタイプだから大丈夫でしょ』って言ったんよ。今がその時!飲も!!」クソ笑った。過去の自分の人でなしさがひどい。今も笑っててひどい。お詫びにたくさんお酌しました。無神経な言葉が誰かの支えになる事もあるのか…そういえば私も昔悩んでた時に友達に言われた「御託並べてんじゃねーよ」って一言が大大大好きで、今でも悩み事があると思い出しては笑ってる。不思議な気持ちになった夜でした。
後編に続く