いつかの日々

旅の記録など

湯河原 富士屋旅館

これは2019年7月に行った湯河原旅行の忘備録です。湯河原は良いぞ〜。

はじめての湯河原

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平日休みが取れたので近場でどこか行きたいな、と思っていた時にこの記事を目にしました。

湯河原。隣の熱海や箱根に比べると静かな温泉地。海が近く山も近い。山の温泉の風情がありつつ海鮮も新鮮で美味しいらしい。湯河原。そもそも名前が良い。この記事に載っている富士屋旅館は今なら平日限定のひとり旅プランもある。よし、行きます(記事読了後5分で予約)

新宿からおよそ1時間45分で湯河原駅に到着です。

湯河原駅

ザ・隈研吾な駅のファサードを抜けると目の前に土産物屋があり、懐かしい感じの喫茶店があり、すでに旅情を感じる。

なだらかな坂道を3分ほど下ってティースタンド「サ行」へ。

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トロピカル烏龍。初夏の心身に染み渡るおいしさ。

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隣のイタリアンレストラン「サルート」の料理もサ行の店内で頂けます。しらすピザ+トロピカル烏龍=もっちり、濃厚、サッパリ、フルーティ…最高の打線を組んでしまった。幸せ〜。テラス席は道路に面していますが平日の昼は通行も少なく、のどかな雰囲気。東京から少し離れただけでこんなに空気が違うのか。

sagyo.co.jp

温泉場エリアまでバスで15分ほど🚌

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雨降りそう…(降った)

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旧・万葉公園。2021年のリニューアル工事により遊歩道など整備されましたが、この時はまだうっそうとした森でした。これはこれで趣きがあって良かった。


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園内の狸福神社には開湯の由来であるお狸さまが祀られてます。平日とはいえ誰とも会わなくて、ここは本当に公園内なのか…?とハテナを浮かべながら森の奥へと進んでいく。

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公園の奥に巨大な足湯施設が。


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湯河原で療養していた国木田独歩にちなんだ「独歩の湯」です。底面の凹凸が足ツボを刺激してくれます。広い足湯をザブザブ歩いていると身体が軽くなっていくのがわかる。

せっかくなので足湯につかりながら青空文庫で独歩の「湯河原より」を読んでみる。予想外にパワフルな恋の話。最後の一文にグッときた。

この独歩の湯は、2021年に惣湯テラスという日帰り温泉施設に転生したので今はもうないのですが、惣湯のコンセプト「Books and Retreat」のなかに「文学と療養」というテーマは継承されているようです。

yugawarasoyu.jp

本日のお宿

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「富士屋旅館」です。わ〜素敵!最高か!完璧だよ!赤い欄干は曇天にも映えるな〜とニコニコしてしまいました。

富士屋旅館の創業は明治9年ですが江戸後期には前身にあたる宿があったそうな。2002年に一度閉館しましたが、2019年にリノベ&再開業したとの事。

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正面に見えるシックな黒壁が新館、左手が旧館、その奥に洛味荘があります。旧館は登録有形文化財。全18室のお宿です。

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モダンで照明が美しいフロント


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アンティークの椅子がこれまた素敵。お付き菓子を頂いていると雨が降りだしました。温泉宿に降る雨、あまりに美しすぎますが……これが風情…ってこと…!?「雨の温泉旅館スチル回収」という新たな趣味が爆誕した。

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新館のエグゼクティブツイン庭側のお部屋。ロッキングチェアに揺られながら雨を見てるだけの時間はなかなか得難い贅沢よ…


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ライティングデスク!最高ハピネス空間!
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ベッドサイドに置いてあった手鏡。インテリアとしても素敵だった。

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新館は「古き良き時代の日本のホテル」をイメージしたとの事で、和のテイストが残ったシックな洋室です。

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館内散策してみる。


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旧館は大正12年に建てられた二階建ての楼閣風建築。 美し…!旧館と洛味荘は全て和室で温泉檜風呂つきです。

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大正ロマン漂う組子入りガラス。よく見るとガラスの柄が均一ではない。大正、昭和それぞれの時代に作られたガラスだそうです。ガラスは割れたら同じものは手に入らないので、新しい模様のガラスを入れる事になるのだ。時代の積層感がたまらんよ。

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渡り廊下。旧館の奥にある「洛味荘」は昭和20年に建てられ、三館の中で一番豪華な作りだそうです。

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渡り廊下の角にはアンティークの椅子が置かれ、小さなライブラリーになっています。


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この空間がめちゃくちゃ好みで、一生池を見下ろしていた。

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緑と雨音に癒されてよかったな〜。

湯河原の湯

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浴室写真は公式HPより。旧館と洛味荘は各自部屋に温泉風呂があり、新館はシャワールームあり。大浴場を使ったので部屋のシャワールームは使わなかったけど、墨色でおしゃなシャワールームでした。

大浴場は天井が高くて開放感がありました。源泉掛け流し、ナトリウム塩化物・硫酸塩泉、弱アルカリ性。熱め寄りの適温。無色透明で柔らかな肌触りのお湯に自我が溶けていく〜。

アメニティのVERDE(ベルデ)のボディバターも森の香りがして夜中まで癒されが続きました。

旅館のお食事

夕飯は新館一階の「瓢六亭」でいただきます。

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鯵の棒寿司、すり流し、青梅。一気に夏が来た。

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鱧とじゅん菜のお椀。スダチと梅が良い仕事してます。


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氷室を開けると金目鯛🐟


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南京饅頭カラスミ青山椒味噌のせ、岩牡蠣に鬼おろし…日本酒にあう……

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鮎、泳いではる

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鱧と夏野菜。炭火で炙られた鱧が香ばしい!夏らしい献立で嬉しい。

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鰻の土鍋ごはん。おいぢいいいいい泣。鰻は関西風。おかわりしたかったけど胃の容量が足りず断念。
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くずきりと焼き大福。補佐役の塩昆布も最高。くずきりの見た目も涼やか。どの料理からも夏を感じて多幸感に包まれた。上げ膳据え膳、ノーメイクで気を抜いて食べれる温泉旅館のお食事にすっかり癒されました。最近ただ生きてるだけで毎日忙しくて、常に前に一直線に進む事を求められている気がして、季節の円環を感じる事がなかった……自分の中でなにかが息を吹き返した気がした。食、だいじ。

朝食も同じテーブルでいただきます。朝もボリューム満点!どんどん食べる!
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魚のアラ入りにゅうめん美味しかった!朝食への関心が薄い私ですが、この朝食はもう一回食べたいです。

美術館へ行こう

近くに町営の美術館があるとお聞きして、チェックアウト後に向かいました。

www.town.yugawara.kanagawa.jp

湯河原町立美術館。旅館(天野屋別館)を改装した美術館。平松礼二館、企画展を行う常設館、ミュージアムカフェ、日本庭園があります。常設展では竹内栖鳳や安井會海太郎など湯河原に縁のある作品が展示されています。何も存じ上げずに訪れたのですが見応えありすぎてビックリした。栖鳳の喜雀、鳴き声が聞こえてくる勢い。

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館内のソファーから眺める青紅葉。もとが旅館の日本庭園なので情緒たっぷり。池ではモネ財団から平松礼二氏に友情の証として株分された水連が育てられています。


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平松礼二館では先生のアトリエも公開されています。川端龍子から譲り受けた筆…!平松礼二をこんなじっくり沢山見たのはじめて。装飾性がめちゃくちゃカッコよくて興奮した。

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美術館のカフェは地元のお豆腐屋「十二庵」さんがプロデュース。豆乳スープやおからサンドなど豆製品が充実。足湯に浸かりながら豆乳ドーナツと黒豆を頂く…目の前は青紅葉…湯河原のポテンシャル高すぎんか?

美術館を後にし近隣を散歩をしていると、2.26事件の現場「光風荘」が。事件の資料館になっており遺留品や手紙などが展示されています。ここも見応えがありすぎた。ボランティアガイドの方からマンツーマンで二時間近くお話しをお聞きしたのですが、この方がすごく博識でお話し上手で楽しかった。無料なのに?湯河原のポテンシャル高すぎんか?(2度目)光風荘は伊藤屋旅館の離れなので、将校たちは連日伊藤屋本館に泊まって様子を伺っていたらしい。確かに勾配の向こうに伊藤屋が見える。地形で感じる生々しさ。

荷物を受け取りに富士屋旅館に戻るとテラスでお祭り準備が進んでいました。

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隔月の第一土日はイベントやマルシェを行っているらしい。この日は七夕ナイト🎋✨

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日本酒と鰻串!

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ビールと焼きもろこし!!優勝!!!

 

旅まとめ

湯河原を好きになるしかない旅でした。富士屋旅館はお料理が最高で、静かで、とにかくリラックスできた。この後も数回泊まっている大好きなお宿です。

湯河原では官民一体となって旅館や公園のリノベーション再生事業を行なっている。賛否両論らしいが、目の前にあるものを残したい、そう考えて手入れしてきた人がいたからこそ昔の美しいものが今ここにある。それをまた未来に生かしていく。土地や文化への愛着が感じられて面白い。

これを書いている今も湯河原にいる。私が人生で一番入浴する温泉になるんだと思う。